2023年4月1日に「同性パートナーシップ制度」を導入した自治体~地図に表してみた

地図
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2023年2月3日、岸田首相の補佐官であった荒井総理大臣秘書官による「同性婚、見るのも嫌だ」発言(2023年2月4日:NHK他)。この発言の後、日本政治において、LGBT問題が大きな注目を集めることとなりました。特に、2023年は日本がG7(先進国首脳会議)の議長国、ホストでありながら、G7内で唯一の同性婚非合法国であることは、日本のみならず世界各国においても報道されています(2023年3月3日:BBC他)。

同性婚の制度化が一向に進まない一方、地方自治体による「同性パートナーシップ制度」については、導入する自治体数が増加しています。近々では2022年11月に、東京都が「東京都パートナーシップ宣誓制度」を開始しています(リンク)。そして、2023年4月1日にも多くの自治体が制度を導入しました。

そこで、2023年4月1日に導入された自治体を調べつつ、これまで同姓パートナーシップ制度を導入自治体を網羅した地図を作成しました。すると、導入の進み具合の地域差がはっきりと見えてきました。ぜひ、あなたのお住まいの地域がどういった状況かチェックしてみてください。

作成した地図はこちら!

図:同性パートナーシップ制度 導入状況(2023年4月1日現在)

GIF:2015年から2023年の同性パートナーシップ制度導入自治体の広がり
見れない方は下記Twitterにてご覧くださいませ。

2023年4月に新たに「同姓パートナーシップ制度」開始する自治体

「みんなのパートナーシップ制度」様からは、2023年3月7日に閲覧した情報を基に、地図を作成しました。しかしながら2023年3月から4月にかけても、新たに「同姓パートナーシップ制度」開始する自治体があります。そういった自治体については、筆者が独自に報道をピックアップし地図に加えています。尚、2023年3月~4月に新たに「同姓パートナーシップ制度」開始する自治体は以下の通りです。

導入(予定)日都道府県自治体名
2023/3/1埼玉県嵐山町(3/27:朝日新聞嵐山町HP
2023/3/1富山県県が実施主体(3/1:NHK富山県HP
2023/3/1静岡県県が実施主体(1/13:静岡新聞静岡県HP
2023/3/1愛知県日進市(2/14:中日新聞日進市HP
2023/3/1高知県香南市(2022/10/18:朝日新聞香南市HP
2023/3/1熊本県菊陽町
2023/3/15千葉県柏市
2023/3/15東京都調布市
2023/3/23埼玉県加須市
2023/4/1北海道北斗市
2023/4/1山形県酒田市
2023/4/1栃木県小山市
2023/4/1埼玉県蓮田市、新座市、朝霞市、志木市、鶴ヶ島市、春日部市、幸手市
杉戸町、小川町、松伏町、滑川町※
2023/4/1千葉県木更津市
2023/4/1東京都墨田区(交付は5/1より)、町田市、日野市
2023/4/1神奈川県湯河原町
2023/4/1福井県勝山市、鯖江市
2023/4/1岐阜県海津市
2023/4/1愛知県知立市、東海市
2023/4/1三重県明和町(3/27:夕刊三重新聞
2023/4/1滋賀県米原市
2023/4/1大阪府吹田市
2023/4/1兵庫県丹波市、丹波篠山市
2023/4/1奈良県五條市(3/22:毎日新聞)、斑鳩町
2023/4/1和歌山県那智勝浦町
2023/4/1岡山県井原市
2023/4/1広島県東広島市
2023/4/1香川県直島町
2023/4/1愛媛県今治市、大洲市※
2023/4/1福岡県直方市、苅田町
2023/4/1熊本県合志市、阿蘇市
2023/4/1大分県豊後高田市
2023/4/1宮崎県小林市
2023/4/24東京都杉並区
2023/10/1島根県県が実施主体(3/15:朝日新聞島根県HP
表:2023年3月以降に「同姓パートナーシップ制度」を導入する自治体
2023年4月6日現在
導入が公表されている自治体を含む
出典(無印):Marriage For All Japan (Twitter)
出典(太字):記載している報道等
※:自治体ホームページ、広報等では未掲載のもの(Twitterで言及するユーザーあり)

同性パートナーシップ制度導入の地域差

作成した地図を見ると、東海道山陽新幹線沿線、いわゆる太平洋ベルト地帯で「同性パートナーシップ制度」導入が先行していることが見て取れます。一方、地図上の黄色、2023年4月に導入された地域は全国に散らばっていることがわかります。都市部から始まった「同性パートナーシップ制度」が全国に広がりつつあるということでしょう。

そういった結果でありますが、表においても導入状況をまとめておこうと思います。

導入状況都道府県政令指定都市・都道府県庁所在地
(市独自の制度がない自治体は除く)
導入(東北)青森・秋田
(関東)茨城・栃木・群馬・東京
(中部)富山・静岡
(近畿)三重・大阪
(中四国)島根➡10/1導入・香川
(九州)福岡・佐賀
(北海道)札幌
(東北)秋田
(関東)さいたま・千葉・横浜・川崎・相模原
(中部)新潟・金沢・長野・静岡・名古屋
(近畿)京都・大阪・堺・奈良
(中四国)岡山・広島・徳島・高松・高知
(九州)北九州・福岡・長崎・熊本・宮崎・鹿児島・那覇
多くの
自治体
で導入
(関東)埼玉・神奈川
(中部)愛知
(中四国)岡山・広島・徳島
(九州)宮崎
都市中心
に導入
(北海道)北海道
(関東)千葉
(中部)新潟・石川・長野
(近畿)京都・兵庫・奈良
(中四国)高知
(九州)熊本・鹿児島
一部
自治体
で導入
(東北)岩手・山形
(中部)福井・山梨・岐阜
(近畿)滋賀・和歌山
(中四国)鳥取・山口・愛媛
(九州)長崎・大分・沖縄
未導入(東北)宮城・福島(東北)盛岡・仙台・山形・福島
(中部)福井・甲府・岐阜
(近畿)大津・神戸・和歌山
(中四国)鳥取・松江➡9/30まで・山口・松山
(九州)大分
表:都道府県・政令指定都市・都道府県庁所在地における「同姓パートナーシップ制度」導入状況(2023年4月1日現在)

北海道

北海道では、札幌市をはじめ7市が制度を有しています。7市は全て地域の中心都市orその隣接都市です。一方、農漁村は完全な空白地帯であり、また旭川市を含む道北地域が完全な空白地帯です。地域の中心都市で導入されていない都市としては、旭川市の他に釧路市、室蘭市、小樽市があります。
全体として、制度が都市から地方に波及されていない状況といえます。

東北地方

東北地方は、全国で最も制度利用が難しい地域です。青森県と秋田県では県の制度として「同性パートナーシップ制度」が導入されています。しかしながら南東北3県はほぼ完全な空白地帯(山形県酒田市のみ導入)です。そして、政令指定都市の仙台市が制度を有していないことも注目されます。仙台市では2021年に導入検討が答申された(2021年3月20日:河北新報)ものの、その後音沙汰がありません。

関東地方

関東地方は、全国で最も導入が進んでいる地域です。特に北関東3県では全県が制度を有しています。また前述の通り東京都でも制度が開始されました。埼玉県では2023年4月1日に多くの県内自治体が導入しました。さらに神奈川県では未導入自治体はあと4市町というところまで制度が普及(県の制度はなし)しています。
一方、比較的遅れているのは千葉県。千葉市、京葉地域、松戸市、柏市が制度を有していますが、房総半島や北総地域に波及していません。…と書きましたが、2023年4月1日、木更津市で制度が開始されます! これを皮切りに他の自治体へも制度が広がっていくことが期待されます。

中部地方

中部地方では東海地方中心で制度が広がっています。県が制度が有しているのが富山県、静岡県。どちらも2023年に運用が開始されました。また愛知県では県の制度はありませんが、特に三河地方中心に制度が広がっています
北陸や甲信地方、岐阜県では、都市や地方の別を問わず、各県に数自治体程度が制度を有しています。しかしながらいずれの自治体も、周囲の自治体へ制度が波及していません。

近畿地方

近畿地方では大阪府中心に制度が広がっています。大阪府では、府としての制度、また各自治体においても人口規模の大きな市中心に制度があります。また京阪神圏で見ても、京都市や奈良市、兵庫県の大阪寄り、姫路市など、都市とその周辺の自治体が制度を有しています。さらに、三重県は県の制度を有しています。
一方、制度利用が難しい地域は滋賀県と和歌山県です。どちらも2市しか制度を有していません。そして注目すべきが神戸市です。仙台市と共に、神戸市は政令指定都市でパートナーシップ制度がない珍しい都市です。その神戸市では、2022年に導入検討が開始されました(2022年10月26日:神戸新聞)。
神戸市において一刻も早く導入されることを、そして制度への理解が進む県、進まない県の差が埋まっていくことを願います。

中四国地方

中四国地方は、制度が広がる県と広がらない県の差がくっきりしています。制度が広がっている県は岡山県、広島県、徳島県、香川県です。特に香川県では全自治体が制度を有しています(県の制度はなし)。島根県では2023年10月に導入予定となっています。
一方鳥取県、山口県、愛媛県、高知県では数自治体が制度を有しているにすぎません。まずは県庁所在地での導入が期待されます。

九州地方

九州地方は、中四国地方程ではありませんが、制度が広がる県と広がらない県の差がくっきりしています。制度が広がっている県は福岡県、佐賀県、宮崎県です。その中でも福岡県、佐賀県は県が制度を有しています宮崎県では宮崎市など沿岸の市町を中心に多くの自治体が制度を有しています
一方、長崎県と鹿児島県、沖縄県ではほとんど制度が広がっていません。九州新幹線や西九州新幹線の開業で、制度導入が進む福岡と西九州、南九州は近づいていきました。パートナーシップ制度も福岡から南九州へ広がっていけばと感じます。

まとめ~関心が広がり、全国で理解が進むことを願う~

LGBTの問題はやはり地方ほど逃避されやすいような印象があります。確かに地図に現れたように、都市部の太平洋ベルト地帯では制度導入が進んでいます。しかしながら、同じく地図に現れたように、地方であっても制度を有する自治体もあるのです。
今回の政界の出来事で、全国でLGBTについて報じられています。地方や小規模自治体でも同性パートナーシップ制度導入事例があるように、LGBT問題への理解は都市や地方で言われるほど差はないのかもしれません。みなさんがお住いの自治体で、いかに多くの方が関心を持っていたかの違いに過ぎないと思うのです。
この記事、そして地図を入口に、少しでも多くの方にLGBTについて関心を持ってもらえたらと思ってなりません。
お読みいただきありがとうございました!

この地図を作成するにあたって

この地図を作成するにあたり、すでに導入している自治体の把握には以下のサイト情報を基に地図を作成しました。リンクを貼っておきます。興味のある方はぜひ訪問し、みなさまお住いの地域について調べてみてください!

みんなのパートナーシップ制度
MarriageForAllJapan

改訂履歴

2023年5月2日:読みやすいように文面を修正しました

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