トキエア~2022年10月時点での状況~

航空
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本ブログでは、プロペラ機LCC計画を進める3社の路線計画を記事にまとめました。ここで触れた3社は、トキエアジェイ・キャス、そしてフィールエアです。

フィールエアも多くの報道がありますが、それ以上に状況が変動したのがトキエアです。
新潟空港を拠点とするトキエアは、就航路線も新潟県や佐渡に特化しており、新潟に密着した航空会社です。そして、現時点で最も就航に近づいているプロペラ機LCCです。しかしながら、プラス・マイナス双方の報道が出ており、計画も修正されてます。
そこで、現時点での報道をまとめ、トキエアの最新の計画をお伝えできればと思います。

延期された就航時期と就航路線

トキエアは当初、2022年の冬ダイヤからの就航を見込み、6路線が計画されていました。しかしながら、2023年3月以降の就航に遅れることが報道されました()。最新の就航時期と就航路線は以下の通りです。
最新の計画では、新潟~札幌-丘珠線と新潟~仙台線の2路線を就航する計画から、新潟~札幌-丘珠線を先行して就航する計画に変更されています。

路線就航時期出典・備考
新潟札幌-丘珠2023年3月下旬~
新潟仙台2023年10月~
新潟中部国際 ※12023年12月~同上
新潟神戸 ※12023年12月~同上
新潟佐渡2024年4月~
佐渡東京-成田2024年4月~同上
表:トキエアの想定就航路線(2022年10月現在)
※1:就航空港は現在計画されているもの
            →未確定状態(
図:プロペラ機LCC就航路線予定図
※他社計画路線を含みます

使用機材

使用機材はATR72-600型機2機(就航開始時)を予定しています。機材は、塗装された状態でフランス・トゥールーズにあるATR社にあり、1機目は11月初旬、2機目は同月末に日本へ向け飛行する予定です()。
また、佐渡空港就航時にはATR42-600S型機を追加で導入する予定です。佐渡空港は滑走路が890mしかなく、佐渡空港のような短い滑走路に対応する飛行機として開発中なのがATR42-600S型機です。トキエアでは、2021年11月16日、ATR社と同型機導入検討に基本合意しました()。しかし同型機は設計が遅れており、すでに飛行しているATR42-600型機を一時的に導入する方針です()。尚、前述のように就航計画は遅れており、この遅れに伴うATR42-600型代替方針への影響は報道されていません。

機種機数製造番号登録記号出典・備考
ATR72-6002機MSN1565
MSN1620
JA01QQ
JA02QQ
ATR42-600S2機不明不明
ATR42-6002機不明不明ATR42-600S開発遅延による代替機
表:トキエアの使用機材(2022年10月現在)

航空運送事業許可(AOC)取得見通し

以前の記事の通り、トキエアは、就航に必要な航空運送事業許可(AOC)を得るための申請が最終段階であると報じられていました()。しかしながら、AOC申請は11月に遅延と報道されました()。
AOCを得るためには安全に飛行機を運航するための体制構築が求められます。これには
・人材確保
・飛行機などの資産
・安全推進室をはじめとした会社組織
・体系的な規程整備
・安定運営のための資本
なども含まれます。つまり、AOCの取得により、運航開始の最終段階に入るということです。
では、トキエアのAOCへの準備状況について見ていきましょう。

人材確保

人材について、客室乗務員については充足していると見られます。2021年末に行った客室乗務員の採用試験は、募集人員の100倍にあたる600人が受験したと報道されていることからも明らかです()。パイロットについても人員数に問題ないと思われます。「機長、副操縦士とも就航時に搭乗するメンバーは確保」との報道もあります()。しかしながら、より安定した運航のために、国土交通省より機長職の更なる確保を求められる可能性もあり、この発言を鵜吞みにはできません。尚、ホームページでは機長候補の募集が継続されています。前述の記事から、今後のAOC取得や路線の運航認可時に国土交通省を納得させるだけの、さらに今後の路線網拡大に対応するだけの、充分なパイロットを確保するための対応と考えられます。

一方、2022年10月5日現在、整備士はホームページにて募集を継続しています。尚、整備士の募集は2021年7月には開始しています()。これまで、整備士や整備関連人員が充足しているとの報道は出ておらず、未だ十分に採用出来ていない可能性も否定できません。機長候補と同様、今後のための募集であることを期待し、またに整備士が充足している旨が近いうちに報道されることを願います。
また運航管理者(ディスパッチャー)については、報道が全くありません。もう充足しているのかについても不明です。

なぜマイナスの可能性に言及しているのかというと、「航空会社の立ち上げに必要なノウハウを持つ人材の度重なる離職」が一部報道されている()からです。航空業界は人材の流動が比較的大きい業界です。度重なる就航遅延は、社員の流出に影響を与えると思われます。パイロットや客室乗務員についても同様であり、今は充足していても、社員に見切りをつけられ、トキエアから離れることのないことを、そして運航に必要な人員を割り込む事態にならないことを願います。

飛行機などの資産

就航に必要な飛行機は、前述の通り、すでにフランスにあります。順調に11月に日本到着となれば良いですが、仮に整備士が不足しているのであれば、フランスに停め置かれる期間が延びる可能性もあります。それは資産がないと同義であり、AOC取得に大きな影響をもたらすでしょう。

会社組織

組織については、それにフォーカスした報道はありません。ですが、安全な運航のために法律で定められている安全統括管理者が任命されたことが報道で触れられており()、組織の準備は着々と進んでいるものと見られます。

規程整備

規程整備についても、それにフォーカスした報道はありません。ですが前述の通り、航空会社の立ち上げに必要なノウハウを持つ人材の度重なる離職が一部報道されています。離職による人材不足により、規程整備作業の遅延が心配されます。しかしながら、資金に目途が立つ11月を目途にAOC申請する予定であることから(後述します)、一定程度まで規程は整っていると考えられます。
尚、AOCの審査では、
・規程に矛盾がないか
・トラブル時に対応できる組織か
などを国土交通省より厳しくチェックされます。JAL傘下のジップエアは短期間で就航していますが、JALANAの傘下にないトキエアは、実績のないこともあり、より厳しくチェックされるものと考えられます。これは、知床の遊覧船沈没事故の影響もあり、過去にないものとなるでしょう()。

安定運営のための資本

一番の難題が資金調達です。当初30億円を目標としていた資金調達ですが、ウクライナ情勢などに端を発した円安や燃料費高騰などにより、目標額が45.5億円に膨れ上がりました。しかしながら、新潟県が11.6億円を融資する予定となったことから、資金調達目標が達成する見込みとなりました。現状の資金調達元は以下表の通りです。
尚、融資のうち7億円程度の融資元が不明であり、報道もありません。しかしながら、県幹部は「国や金融機関の協力も得て、収支などを精査し、事業計画を確認した」()と発言しており、この金額分を含めて融資の見込みは立っているものと考えられます。
いずれにしても、最大の難題をクリアする状況となり、就航にぐっと近づきました!

資金拠出元金額出典・備考
株主18.6億円
3行協調融資
大光銀行
新潟信用金庫
商工組合中行資
3億円超
資本性劣後ローン
日本政策金融公庫
5億円規模
その他融資
詳細不明
最大7.3億円他項目より
筆者にて計算
新潟県融資11.6億円
合計45.5億円
表:トキエア資金調達元(2022年10月現在)

AOC取得後の今後の流れ

人材確保への心配は残りますが、トキエアがAOCを取得する目途は立ちつつあります。
しかし、AOC取得後は
・訓練飛行
・路線就航認可
などが待ち構えています。
AOC取得=運航開始確定ではありません。過去の航空会社設立では、各社が就航開始までの幾度となく計画変更・延期となっているのです。
2014年に就航を果たした春秋航空日本(現:SPRING JAPAN)は、2014年6月27日の就航予定を「運航体制が整わず、期限までに国土交通省の認可を得られないと判断」した為、2014年8月1日の就航に延期しています()。2017年に就航を果たした2代目のエアアジア・ジャパンはAOC取得後、就航の無期限延期を発表しています()。結果的に、AOC取得から2017年の就航までに2年を要しています。
AOC取得時には既に飛行機の安全な運航体制が構築され、訓練飛行等の一時的な飛行に対する安全は国に認められています。しかし、毎日複数便を安全かつ安定して運航する体制は、就航路線の運航許可までに別途整えなければならないのです。
今後は、就航前の訓練飛行などにおいて、より安全かつ安定して運航するために修正すべき事項が多く生じます。これらに適切に対応できるかも重要です。いずれにしても、就航までに一番近い立ち位置であることに変わりはありません。

新潟県は、10億もの融資という形で、トキエアの就航を何としてでも実現しようという意欲を見せましたトキエアはそれだけ地元からの多くの期待を受けて進んでいます。今後もひとつひとつ着実に課題をクリアし、少しでも早い時期に安全かつ安定した会社として就航を迎えることを願って止みません。

お読みいただきありがとうございました。

こちらもどうぞ

フィールエアについても記事を書いていますのでぜひご覧ください!

出典

2022年9月16日:新潟日報
トキエア(新潟)就航、23年3月以降にずれ込み

2022年9月21日:日本経済新聞
トキエア、11月以降に航空運送事業許可を申請と発表

2022年9月23日:Aviation Wire
トキエア、ATRと10年間の整備契約 新潟県は11億円融資へ

2022年9月25日:FNNプライムオンライン
新潟の空を変える!
格安航空会社「トキエア」が2022年度中の初フライト目指す
貨物との“W運航”国内初の試みも

2022年2月18日:新潟日報
トキエア就航まで半年、6路線順次開設

2022年10月5日:UX新潟テレビ21
「トキエア」 収支計画が明らかに 黒字化は2024年度・佐渡ー成田就航を目指す スーパーJにいがた10月5日OA

2022年9月20日:日本経済新聞
トキエア、中部国際空港・神戸空港に就航打診

2021年11月16日:Aviation Wire
トキエア、ATR42-600S導入検討で基本合意 佐渡も就航可

2022年2月4日:新潟日報
トキエア佐渡線 別機種軽量化で代替

2021年9月29日:トキエアプレスリリース
航空機(ATR72-600)のリース契約を締結しました

2022年7月19日:日本経済新聞
トキエア、航空運送事業許可申請で最終調整

2022年3月16日:トラベルビジョン
夢をあきらめるな!
新潟から地域航空の可能性を広げる
ートキエア代表取締役 長谷川政樹氏

2021年7月27日:Flyteam
就航準備中のトキエア、事業戦略マネージャー・運航乗務員・整備士募集

2022年9月29日:UX新潟テレビ21
円安・物価高騰の逆風 トキエア就航へ膨らむ経費 30億円⇒45億5千万円に スーパーJにいがた9月29日OA

2022年9月29日:日本経済新聞
出資見込み額は18.6億円との答弁

2021年11月24日:トキエアプレスリリース
金融機関からの融資による資金調達について

2022年9月16日:日本経済新聞
トキエア、日本公庫に融資打診 5億円規模

2014年6月6日:日本経済新聞
春秋航空日本、就航を1カ月延期 運航体制整わず

2017年1月30日:日本経済新聞
(短信)中部空港就航3度目延期 エアアジア

更新履歴

2023年5月2日:目次を付加しました

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